第12期 決算・運用状況のご報告(資産運用報告)

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成長途上にある日本の
再生可能エネルギー市場を支える
リーディング投資法人として

カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人 執行役員
カナディアン・ソーラー・アセットマネジメント株式会社
代表取締役社長

柳澤 宏

第12期の運用実績についてご教示ください。

第12期は期中を通じて全般的に天候に恵まれたものの、九州電力管内を中心に出力制御の実施回数が前年同期比で大幅に増加した結果、発電電力量へのマイナス影響は過去を通じて最大となりました。特に3月、4月、5月の3か月間は九州電力管内のみならず、中国電力管内、東北電力管内も含めて幅広く想定を上回る出力制御回数・制御時間が実施された結果、実績電力発電量は予想発電電力量対比で88.05%と運用開始以来最も低いパフォーマンスとなり、営業収益は期初予想に対して下回る結果となりました。一方、営業費用面では保守管理費用、減価償却費および事務手数料が期初予想を下回り、また営業外損益においても受取保険料収入の計上がありましたが、営業収入面での減少をカバーしきれずに営業利益以下の各項目においても当初予想対比では未達となりました。最終的な実績は、営業収益は3,452百万円、営業利益は1,156百万円、経常利益は1,003百万円、当期純利益は1,003百万円となりました。その結果、1口あたり利益分配金は期初予想比で374円減額し2,595円となりました。一方で、利益超過分配金については同額の374円を増額し、1口あたり分配金合計は期初予想と同額の3,750円を維持することとしました。

第12期においては出力制御の影響が大きかったといえますが、今後の出力制御の見通しと運用への影響についてご教示ください。

第12期においては、想定を超える出力制御の実施回数、実施時間となりましたが、この要因としては、引き続き太陽光発電設備の導入が堅調に増加していることによる供給面での増加に加え、電力価格の高騰を踏まえた節電の影響により需要面での減少があったものと考えられます。一方、第13期においては、出力制御による影響は限定的と考えております。その理由としては、これまで出力制御は8割以上が3月から5月にかけて実施されてきたこと、本投資法人が第12期末時点で九州電力管内に保有する10発電所は全て出力制御実施日数が最大30日に制約される30日ルールが適用されており、2023年度(4月以降)に入ってからの出力制御実施回数がすでに30日に迫っていることが挙げられます。
なお、今後の出力制御低減に向けた対策としては行政レベルでの取組みが開始されています。2023年5月には経済産業省の系統ネットワーキンググループで①新設の火力発電所設備の最低出力の引き下げ(50%⇒30%)、②広域的な出力制御の運用等の案、同年6月の「電力・ガス事業分科会再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」において、「再生可能エネルギーの出力制御の低減」という基本方針の下で有識者による議論がなされ、供給面、需要面、系統面のそれぞれにおいて取りえる取組みについて幅広く検討の上、2023年内を目途に、再エネの出力制御低減に向けた新たな対策パッケージを取りまとめるとしています。以上を踏まえ、来年度以降は本年と比較して出力制御による影響は緩和されるものと期待しています。

第3回公募増資についてご教示ください。

第3回公募増資においては、オーバーアロットメントを含め公募・売出しで65,100口、オファリング総額で7,322百万円のエクイティ調達を行いました。更に長期借入金11,600百万円および消費税ブリッジローンによる短期借入金1,100百万円により総額で12,700百万円の借入金調達を行い、合計で5物件、総額16,780百万円の資産を新たに取得しました。今回の取得の特徴としては、①32~40円と比較的高いFIT価格の発電所であること、②所在する地域については、東北電力、東京電力、中国電力および九州電力管内と分散されていること、③スポンサー案件4物件に加え、今回初めて第三者開発案件であるCS嘉麻市発電所を取得したことが挙げられます。取得後には上位3物件のパネル出力ベースでの比率は約7割から57%程度に低下して分散が進むことにより集中リスクも緩和されています。また、今回の取組みにより第14期および第15期の一口あたり分配金は3,775円と25円増配する予定です。内訳としても、特に利益分配金の増加率が第14期では6.61%(194円), 第15期では0.96%(29円)、年間ベースで見た場合3.74%(223円)と大幅に増加する見込みであることから、今回の取組みにより大きな効果を得られると考えています。

今後の成長の見通しおよび取組みについてご教示ください。

本投資法人はこれまでスポンサー・パイプラインを中心に中期目標として資産規模1,000億円を目指してまいりましたが、ほぼその規模に到達したため、今回新たな中期目標として2,000億円を掲げてさらなる成長を目指してまいります。2,000億円の資産規模拡大にむけては、豊富なスポンサー・パイプラインからの取得に加え第三者開発案件の取得を加速させて取得ルートの多様化を図りたいと考えています。現在のパイプラインの稼働済み、建設中の資産および開発中資産は合計21物件350.6MWあり、現時点での保有資産のパネル出力225.3MWと比較しても十分な規模となっています。特にその中でも2023年5月末にはスポンサー開発案件としては最大かつ日本有数の大規模プロジェクトであるCSあづま小富士発電所のブリッジファンドへの譲渡が完了しています。資産運用会社であるカナディアン・ソーラー・アセットマネジメント株式会社は将来の本投資法人による取得を目指し、ブリッジファンドとの間で基本合意書を締結し優先交渉権を保有しております。なお、今回初めて実施したブリッジファンド活用の利点としては、①売主と本投資法人の取引希望タイミング不一致の調整②取得物件数、取得規模のコントロールが可能となり本投資法人の物件取得が柔軟にできることが挙げられます。このように物件の取得ルートや取得方法を多様化していくことにより安定的な外部成長を目指す方針です。

再生可能エネルギーを取り巻く環境

日本政府は、2050年までに温室効果ガスの排出量実質ゼロを目指す目標を設定しました。
政府の方針及び予測等を踏まえ、再生可能エネルギーの電力供給量が大きく増加する可能性があると本投資法人は考えています。

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再生可能エネルギーを取り巻く環境

カーボンニュートラル実現を目指すにあたって

2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画では、「S+3E(注)を大前提に、再生可能エネルギーの主力電源化を徹底し、再エネに最優先の原則で取り組み、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら最大限の導入を即す」とされました。具体的な取組みとして、①地域と共生する形での適地確保、②事業規律の強化、③コスト低減・市場への統合、④系統制約の克服、⑤規制の合理化、⑥技術開発の推進を挙げました。
2030年政府目標の電源構成比率は36〜38%が見込まれており、その中でも太陽光発電は最も比率が高く14〜16%とされていることから、当面は太陽光発電の果たす役割が重要となるといえます。

(注)安全性(Safety)、安定供給(Energy Security)、経済性(Economic Society)、環境(Environment)の頭文字をとったもの。

再生可能エネルギーの構成比率 目標36〜38%、太陽光発電は最上位の14〜16%

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再生可能エネルギーの構成比率
出所 : 経済産業省資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会資料を基に本資産運用会社作成

日本における温室効果ガスの排出量内訳

日本における温室効果ガス排出量全体において、電力由来のCO2排出量は35.7%を占めており、再生可能エネルギーの導入及び普及によるCO2排出量削除への寄与が期待されている。

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日本における温室効果ガスの排出量内訳

その障壁となる規制等を総点検し、必要な規制見直しや見直しの迅速化を促すことが不可欠であるという判断の下、政府は2020年11月にこうした規制改革をスピード感をもって実現するために「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」を設置し、①立地制約、②系統規制、③市場制約、④地域との共生、⑤その他の分野で、多くの規制緩和・撤廃の要望が出され、検討が始まっています。

Feature Story

ESG金融と日本のカーボンニュートラル政策について

ESG ENVIRONMENT SOCIAL GOVERNANCE

従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)という非財務情報を考慮して行う投融資はESG金融と呼ばれていますが、世界的に注目されているESG金融が、国内でもここ数年顕著に拡大してきています。
本投資法人の投資口への投資、銀行からの融資やグリーン・ボンドの発行も、このようなESG金融の好影響を受けていることは言うまでもありません。
ESG金融が質的、量的にも進化・拡大するにつれて、グローバルな企業を中心に発行体も、TCFDと言った気候変動関連リスク及び機会の開示やRE100のように脱炭素に向けた目標設定に積極的に対応する動きが増加しています。換言すれば、投資家や銀行もこうしたESGに係る取組み姿勢を積極的に評価し、企業もこうした取組みを通じた企業価値の向上を強く意識し始めています。

国内では、菅前総理が2020年10月に所信表明演説の中で2050年までに温室効果ガスの排出量実質ゼロを目指す目標を設定して以来、日本政府の脱炭素社会に向けての取組みが加速しています。
このような新しい潮流の中で、先進的なグローバル企業の中には、その取引先にも目標設定や再エネ調達等を要請するところも出て来ており、脱炭素社会の実現に向けての動きが、企業経営の戦略に影響を与え、また、新たなビジネスチャンスの創出につながって来ています。