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第14期の運用実績についてご教示ください。
第14期は一部の月で天候が不安定だったことに加え、特に4月においては九州電力管内の発電所を中心に出力制御が一定程度実施されたことにより、前年同期(第12期)比では改善したものの、実績発電電力量が予想発電電力量対比で95.34%となった結果、営業収益は4,367百万円と期初予想に対して133百万円下回りました。営業費用では予算対比での工事額の減額、外注費を中心にコストを一定程度抑えたことにより営業利益は1,608百万円と期初予想を63百万円下回りました。営業外損益においては借入金の支払利息および融資関連費用の減額により経常利益は1,361百万円と期初予想を42百万円下回りました。その結果、当期純利益は1,361百万円と期初予想を42百万円下回ったことから、1口あたり利益分配金は期初予想比で94円を減額し3,013円となりました。利益超過分配金については同額の94円を増額し、一口あたり分配金合計は期初予想と同額の3,775円といたしました。
第14期における出力制御の影響についてご教示ください。また今後の出力制御の見通しと運用への影響についてご教示ください。
第14期は季節要因もあり、特に4月を中心に出力制御が多く実施されました。ただし、期中を通じた実施回数は前年同期の第12期と比較して減少し、逸失変動賃料も386百万円となり、前年同期の857百万円から大きく減少しております。昨年からの減少の主な理由としては、前年と比較して電力需要が回復したことに加え、行政レベルでの再生可能エネルギーの出力制御の低減に向けた取組が一定程度寄与していること等が考えられます。2023年12月に『電力・ガス事業分科会再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会』において発表された「再エネ出力制御対策パッケージ」に基づき、需要面、供給面および系統面のそれぞれにおいて複数の具体的な対策が打ちだされており、今後も出力制御の低減に一定の効果をもたらすものと期待できます。
今回発表した中長期戦略の詳細についてご教示ください。
今回発表した新たな中長期戦略では、①運用戦略および②財務戦略の二つの軸を通じた投資主価値の最大化を目指してまいります。運用戦略については再エネ市場を取り巻く環境が変化していることに伴い、その変化に柔軟な運用施策を行うために、事業面において検討・立案を行うものであります。また、財務戦略においては、新たなキャッシュマネジメント方針として手元資金の活用方法を刷新するものであります。また、この中で本投資法人はPost FIT後も継続的に拡大・成長することを目標に中期経営計画 “VISION 2030”を掲げ、投資主価値向上に向けた取組を行うことによって、上場ビークルとして永続的に運営を行っていくための基礎を作っていきます。2030年はあくまでもPost FITに向けた中間地点ではありますが、まずは中期的な目標として①資産規模拡大・取得ルートの多様化、②コーポレートPPA締結済発電所の取得、③リパワリングの実施や蓄電池設備の導入等を通じて事業を進めていく方針です。具体的な目標としては、①資産規模3,000億円、②公募増資等による資産取得時ごとの利益分配金(EPU)3%成長、③AA格の格付の取得の3つを掲げます。
具体的な戦略については①運用戦略と②財務戦略に分けてそれぞれご説明します。
①運用戦略
a)外部成長
外部成長戦略としては、これまで本投資法人はスポンサーであるカナディアン・ソーラー・グループの開発力を背景に資産規模を拡大してきました。今後も豊富なパイプラインの提供が期待されることから継続的に取得を目指してまいります。また、太陽光発電設備のセカンダリー市場は近年大きく成長しており、2020年度は累計で22.7GWだった市場が2030年度予測として約4倍となる79.4GWと試算されていることから、これまで以上にセカンダリー市場からの「第三者開発案件」の取得を拡大して成長を加速させていく方針です。
更に、今後はFIT案件以外の資産の取得も目指していきます。具体的には国内CPPA市場の拡大が期待される中、本投資法人では「FIP/CPPA案件」の取得を目指していくものであります。CPPA案件とは、FIT案件とは異なり発電した電力を電力会社に販売するのではなく、個別企業などの需要家やアグリゲーター等のオフテイカーと直接電力売買契約(PPA)を締結することによって、原則として固定価格で電力の販売を可能とするものです。FIT制度のもとでは20年間固定価格で大手電力会社に販売していた電力を、CPPAでは主に大手企業に対して長期間安定した価格で電力を販売していくことになります。CPPA市場については今後大きく拡大することが予測されており、それに伴いCPPA案件のニーズの高まりが期待されます。更には、FIT期間終了後に既に保有する発電所で新たにCPPA契約を締結することも可能であり、潜在的に大きな可能性があると考えております。
b)内部成長
内部成長の具体的な施策としては、Post FITを見据えた既存保有施設のリパワリングや蓄電池設備の導入があります。リパワリングとは技術の進歩に基づき既存の設備を更新し、より発電効率のよい発電所とすることで同じ施設においても発電量を増加し、収入面を増加させる取組みとなります。また、蓄電池設備については、年々技術革新による製品能力の向上とともに価格低下により、蓄電池設備の導入による投資を上回るリターンを得ることが可能となってきております。例えば、FIT期間終了後の発電所、または現在FIT制度期間中の発電所をFIPに切り替えた場合、春、秋や長期休暇期間を中心に多く発生している出力制御に対応してその時間帯に発電した電力を蓄電池に貯蔵し、夕方以降の市場価格の高い時間帯に売電することによる副次的な収入を得ることが可能となります。なお、スポンサーであるカナディアン・ソーラー・グループはこの分野においてもグローバルに事業を展開しており、特に海外では蓄電池の製造や蓄電池設備の開発も多く行っているなど、グループ内で知見を持ち合わせていることから、今後の本投資法人の事業展開においても活用ができるものと考えております。このように太陽光発電所はFIT期間の20年で事業が終了するものではなく、いわゆる系統に接続していること自体に資産としての価値があります。FIT期間終了後は、特に高FIT発電所では収入が減少しますが、一方で市場売電のみならず多角的な対応による収入増も可能となっております。また費用面では減価償却期間終了後の大きな費用減、償却資産税の減少、借入金返済完了による金利負担の減少など大幅な減少も期待されることから、半永久的に事業を行うことも可能と考えております。
②財務戦略
今般、財務面での重要な要素であるキャッシュマネジメントに関して方針を見直すこととしました。具体的にはこれまで減価償却に基づく手元資金については、借入金の約定弁済後は主に利益超過分配金として投資主の皆様に分配を行っておりましたが、今後は市況や事業環境に応じて資金を戦略的に活用する方針に変更するものです。
新規キャッシュマネジメント方針としては、期初の利益分配金予想から最終的な金額が減少した場合など一定水準までは利益超過分配金の支払いを行うものの、主な使い道としては、資本的支出、自己投資口の取得、新規物件取得、借入金の一部返済とするものであり、それにより投資主価値の最大化を目指すものであります。具体的には当期純利益に減価償却費を加えたその期中に稼ぎ出した実質的なキャッシュフローをFunds from Operation(FFO)と定義し、原則としてFFOを原資として利益分配、約定返済を行ったのち、残りのキャッシュフローにて利益超過分配金(調整部分)、資本的支出、自己投資口取得、新規物件取得、借入金の一部返済等を行うものです。この方針変更により、これまでより健全な資金の活用を行うことが可能となります。利益超過分配金は名目上分配金ですが、会計上はあくまでも投資元本の払い戻しであり、本質的な利益の分配による配当金ではありません。第15期より継続的な利益超過分配を行わないことにより、短期的には現金分配は減少するものの、中長期的には投資主の皆様にとってのメリットを提供し、投資主価値の向上に結びつくものと考えております。なお、新規キャッシュマネジメント方針に基づき、本投資法人は第一弾の施策として自己投資口の取得、および手元資金による新規物件の取得を発表しました。いずれの施策も、投資主の皆様への一口あたりの分配金(EPU)の増加に寄与するものと考えています。
今後の分配金の見通しについてご教示ください。
今回の中長期戦略で発表したとおり、今期より分配方針を変更し、継続的な利益超過分配は実施せず、期初予想時点では、原則利益分配のみを行う方針といたします。ただし、期初の利益分配予想から最終的な金額が減少した場合などは一定水準までは利益超過分配金の支払いを行います。第15期、第16期および第17期一口あたり予想利益分配金(EPU)の水準についてはそれぞれ3,066円、3,198円、3,104円と予想しています。このように今後は本質的な収益力を示す一口あたり利益分配金(EPU)の成長を目指すことにより投資主の皆様への還元を実現していく方針です。
今回発表した自己投資口の取得についてご教示ください。
自己投資口の取得に至った背景としては、2024年6月中旬以降の投資口価格の下落があります。現在の投資口価格の下落は、本投資法人を取り巻く事業環境や業績に大きな変化がない中で、主に足元の為替・金利動向、株式市場の大きな変動やインフラ投資法人の事業や将来に対する市場の必要以上の不安等に起因している部分もあると考えております。その中で、本投資法人は、市場に対して現在の投資口価格が本来あるべき事業価値を反映していないというメッセージの伝達を行う目的で、手元資金の有効活用として自己投資口の取得を通じて、投資主の皆様への還元を行うものといたしました。具体的な取得プランについては、取得上限は12,000口、買付枠は最大10億円、買付期間は8月19日から11月29日までです。自己投資口取得の効果としては、取得後に消却を行うことにより発行済投資口数を減少させることになりますので、一口あたり利益分配金(EPU)が向上することになります。